妻はなぜ守られなかったのか――病院の沈黙に揺れる夫の祈り|テレホン人生相談

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👤 相談者プロフィール

年齢:57歳
性別:男性
家族構成:妻(58歳・精神障害2級・入院中)/子どもなし
職業:不明
婚姻期間:20年以上
特記事項:12年前から妻が精神科病院に入院。6か月前の発作事故で重度障害(寝たきり・言葉不可・胃ろう・気管切開)に。

🗣️ 相談内容

57歳の男性。結婚しており、妻(58歳)は12年前から精神科病院に入院中。精神障害2級の認定を受けている。

6か月前、妻が入院中に「転換(てんかんに似た発作)」を起こして転倒し、右頭部を強打。大学病院で手術を受けたが、その後脳梗塞を併発し、現在は寝たきりで、言葉も話せず、手足も動かず、胃ろうと人工呼吸器で生命を維持している。

主治医からは「発作の危険性があるため保護帽を着けていた」と説明を受けていたが、倒れた際には本人がその帽子を外してしまっていたという。家族としては防ぎようがなかったとはいえ、「なぜ外せたのか」「防げなかったのか」という疑問と後悔が残る。

病院側からは経過説明を受けたものの、院長など上層部からの正式な謝罪はなかった。相談者は「訴えるつもりはないが、今後同じ悲しい事故を繰り返さないためにも、病院の責任ある立場の人から謝罪と再発防止を約束してほしい」と望んでいる。

ただし、「それを求めることで妻の扱いが悪くなるのではないか」という不安もあり、どう行動するべきか迷っている。

⚖️ 専門家の回答(弁護士:野島理恵/パーソナリティ:田中ウルベ都)

  • 謝罪を求めることは、法的にも人としても自由。誰も止める権利はない。
  • ただし、相手が誠実に謝罪してくれるかどうかは、あなたの思い通りにはならない。
  • 「お金がほしいのではない」「悲しみを分かってほしい」という気持ちを、静かに伝えることが大切。
  • 訴訟ではなく「再発防止のために話したい」という姿勢を取れば、誠実な対話につながる。
  • 田中ウルベ都さんからは、「まず、自分が何に対して謝ってほしいのかを整理してみて」との助言。
    主治医に対し、『なぜ帽子が取れたのか』『今後どう防ぐのか』を冷静に尋ねることを勧めた。
  • 感情的にならず、「もう誰にも同じ悲しみを味わってほしくない」という思いで話すこと。
    それが“怒り”ではなく“祈り”として伝わる。

「怒りよりも悲しみを伝えると、相手の心が動くことがあります」

💬 感想

この相談には、深い哀しみと静かな愛情が漂っていた。
「妻のために怒る」のではなく、「妻の人生を想い、悲しみを形にしたい」と語るその姿は、
まるで祈るようだった。

野島先生の言葉にあるように、謝罪を求めても心が完全に癒えるとは限らない。
それでも、声を上げること自体が“心の整理”になる。
田中ウルベ都さんの「何に対して謝ってほしいのかを明確に」という助言は、
悲しみを理性で包むための灯のようだった。

人は、誰かの誠実な一言で救われることがある。
そして、その一言を求めて生きるのもまた、愛のかたちかもしれない。
あなたなら、この悲しみにどう言葉をかけますか?

📘 まとめ

  • 謝罪を求めるのは自由。ただし、相手の反応に過度な期待はしない。
  • 「怒り」ではなく「悲しみ」から語ることで、誠実な対話が生まれる。
  • 何に対して謝ってほしいのか、自分の中で明確にする。
  • 主治医や病院には、「再発防止」を目的に冷静に話をする。
  • 誰かを責めるより、“もう同じ悲しみを生まないために”声を上げる勇気を。

2025年10月10日放送「テレホン人生相談」より

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